モーゲージ債は専門用語や仕組みが多く、初めてだと敷居が高く感じられますよね。
金利変動や繰上返済が利回りや価格に複雑な影響を与えるため、理解不足だと投資判断を誤りがちです。
この記事では用語をかみ砕き、具体的な計算例やチェックリストを交えて分かりやすく説明します。
基本定義、価格形成、利回り計算、プリペイメント、リスク管理から実務の手順まで段階的に学べる構成です。
数学が苦手でも実務で使える視点や銘柄選定の具体的なポイントがつかめるようにします。
まずは基本から順に見ていきましょう。
読み進めればモーゲージ債の本質がつかめて、投資判断がぐっと楽になります。
モーゲージ債を簡単に学ぶ
モーゲージ債とは住宅ローンなどを裏付けに発行される証券で、複数のローンが束ねられて投資商品になります。
投資家はローンの利息や元本の支払いを通じて収益を得ますが、仕組みやリスクは社債や国債とは異なります。
基本定義
モーゲージ債は英語でMortgage-Backed Securitiesと呼ばれ、略してMBSとも表記されます。
発行体は銀行や証券会社で、ローンを貸し出した金融機関が多数の債権をまとめて証券化します。
投資家はその証券を購入することで、元本と利息のスライスされた権利を受け取ります。
価格形成の仕組み
モーゲージ債の価格は将来のキャッシュフロー期待とリスクプレミアムで決まります。
金利水準の変化が最も大きな影響を与えますが、繰上返済の見通しも重要です。
市場では同等の期間や信用度を持つ債券と比較してスプレッドが付くことが一般的です。
主な構成要素
裏付けとなる住宅ローンや商業用ローンの性質が最も重要です。
- 貸出元(オリジネーター)
- 債務回収管理(サービサー)
- 裏付けローンの種類と信用度
- トランシェ構成と優先劣後
- 信用補完(保証や保険)
これらが組み合わさることで、収益とリスクの配分が決まります。
利回りの計算
利回りは表面利回りだけでなく、実効利回りや加重平均の計算が必要です。
割引現在価値で将来のキャッシュフローを評価し、実際の収益を算出します。
| 指標 | 計算例 |
|---|---|
| 表面利回り | 年利息額 額面価格 |
| 実質利回り | 割引率で現在価値を算出 内部収益率を求める |
| 修正デュレーション | 価格感応度の指標 金利変化に対する比率 |
割引やIRRの計算ではプリペイメントの想定が結果を大きく左右します。
プリペイメント
プリペイメントとは借り手がローンを繰り上げ返済することを指します。
金利が低下した場合に発生しやすく、投資家にとっては予定より早い元本回収となるリスクです。
プリペイメントはキャッシュフローの不確実性を高め、利回りの低下を招くことがあります。
投資判断の視点
投資家は金利見通し、プリペイメント予測、トランシェの優先順位などを総合的に判断します。
ポートフォリオに組み込む際は流動性と信用保全のバランスを確認することが重要です。
ヘッジ手段やストレステストも併せて検討し、安全余裕を確保する考え方が求められます。
価格変動要因
モーゲージ債の価格がどのように変動するかを、実務的な視点で整理します。
金利や借り手の行動、市場構造が絡み合い、価格に複雑な影響を与えます。
金利変動
モーゲージ債は市場金利と逆方向に動く性質があります。
具体的には、金利が上昇すると既存のモーゲージ債の価値が下がり、逆に金利が低下すると価値が上がります。
ただし、単純な債券とは異なり、借り手の繰上返済というオプションが絡むため挙動がより複雑になります。
短期的な金利変動は価格に即時の影響を与えますが、中長期の金利トレンドが保有価値を左右します。
イールドカーブの変化やスワップ金利の動きもモーゲージ債の相対価値を決める重要な要因です。
繰上返済
繰上返済はモーゲージ債のキャッシュフローを早め、利回りと残存期間に直接影響します。
繰上返済が急増すると、投資家は予定より早く元本を受け取り、再投資リスクに直面します。
借り手がいつ、どれだけ繰上返済するかは、個人の事情や市場金利に左右されます。
- 借り換えによる繰上返済
- 住宅売却による返済
- 余剰資金での一括返済
- 政策的支援やインセンティブ
これらの要因を予測するために、モーゲージ市場ではCPRやSMMといったプリペイメント指標が使われます。
投資判断では平均的なプリペイメント速度だけでなく、ストレス時のシナリオも検討することが重要です。
期間構成
モーゲージ債の期間構成とは、ポートフォリオ内のローンの残存期間分布を指します。
短期間に返済が集中するか、長期間にわたって分散しているかで価格変動の敏感度が変わります。
| 期間タイプ | 特徴 |
|---|---|
| 短期集中 | 高い現金回収率 |
| 長期安定 | 持続的な利息収入 |
| 混合型 | バランス型のリスク特性 |
期間が短いほど金利変動の影響は限定的になり、逆に長期組成は金利ショックに弱くなります。
投資家はデュレーションや加重平均寿命を見て、期間構成を評価します。
住宅ローン市場動向
住宅ローン市場の需給や与信基準は、モーゲージ債の価値に影響します。
例えば、住宅販売が活発で借り手の入れ替わりが増えると、繰上返済やローンの組成が増えます。
また、与信基準が厳しくなれば新規ローンのクオリティは向上しますが、発行量は減少するかもしれません。
失業率や所得動向、地域ごとの不動産価格の変化も注意すべきポイントです。
公的政策や税制変更も市場参加者の行動を変えるため、常に注視する必要があります。
オプション価値
モーゲージ債には借り手側の繰上返済オプションが埋め込まれており、この価値が価格に影響します。
オプションの価値が高い状況では、債券は価格下落に対してより敏感になります。
オプション調整後スプレッド(OAS)などでオプション影響を分離し、相対評価を行うのが一般的です。
投資家はこのオプションをヘッジするか、許容してスプレッドを享受するかを判断する必要があります。
モデルを使った評価では、オプションの行使率やボラティリティの仮定が結果を大きく左右します。
投資リスクと管理
モーゲージ債に固有のリスクを体系的に理解し、適切に管理することは投資成果を左右します。
本節では主要なリスクを整理し、それぞれに対する実務的な管理手段をわかりやすく説明します。
金利リスク
金利リスクは金利水準の変化がモーゲージ債の価格に影響を与えるリスクです。
モーゲージ債はキャッシュフローの期間構成が複雑で、デュレーションやコンベクシティの変化を通じて価格が動きます。
特に長期金利が上昇すると価格は下落し、逆に金利が低下すると繰上返済が進んで投資の平均期間が短くなる点に注意が必要です。
ヘッジ手段として金利スワップや国債先物を活用し、金利エクスポージャーを調整することが一般的です。
しかしヘッジコストやミスマッチリスクも生じるため、定期的なリバランスとコスト管理を行うことが重要です。
信用リスク
信用リスクはローン債務者や証券化のオリジネーターが債務不履行となる可能性を指します。
モーゲージ債はしばしばトランシェ構造を取り、クレジットエンハンスメントによりリスクが分配されています。
評価では借り手属性や担保価値、オリジネーションの質を丁寧に確認する必要があります。
- 借り手の返済履歴
- 担保の所在地と価値
- ローンのLTV比率
- オリジネーターの審査基準
- 担保保険や保証の有無
デューデリジェンスの深さが投資判断の精度を左右しますので、標準化されたチェックリストを活用すると便利です。
流動性リスク
流動性リスクは市場で迅速に取引できないことや売却時に価格が悪化することを意味します。
モーゲージ債は発行体やトランシェ、二次市場の出来高によって流動性特性が大きく異なります。
| 兆候 | 対応策 |
|---|---|
| 出来高減少 | 保有期間の延長 |
| 入札者の減少 | ストレス売却回避 |
| スプレッド急拡大 | 流動性プレミアム設定 |
流動性管理ではポートフォリオの保有比率や売却計画を事前に定めることが有効です。
また、代替市場や流動性供給者の存在を確認し、想定外の注文に備えた流動性バッファを確保してください。
プリペイメントリスク
プリペイメントリスクは借り手が予定より早くローンを返済することで生じるリスクです。
金利低下局面では再借入や借り換えが増え、投資家は予定していた利息収入を失う可能性があります。
プリペイメントを評価する指標としてCPRやPSAモデルが広く使われますが、地域特性やローン特性も考慮する必要があります。
ヘッジ方法としてはプレイメントのオプション価値を考慮したポジショニングや、プレイメントに強いトランシェ選択があります。
それでも予測誤差は残るため、シナリオ分析で最悪ケースを想定し、ポートフォリオ耐性を確認してください。
モデルリスク
モデルリスクは将来の現金フローやプリペイメントを予測する際の誤差や誤った仮定がもたらすリスクです。
多くの評価は確率的なモデルに依存しますので、入力パラメータや構造的仮定の妥当性が重要になります。
対策としてはバックテストやアウトオブサンプル検証を行い、モデルの過度な最適化を避けることが挙げられます。
また、複数モデルの併用やストレステストにより、結果のロバストネスを評価することが推奨されます。
最終的にはモデルガバナンスを整備し、定期的なレビューと説明責任を果たすことが実務上の要です。
利回り評価と比較指標
モーゲージ債への投資判断では、利回りを正しく評価することが基本になります。
異なる指標はそれぞれ意味合いが異なり、投資目的やリスク観に応じて使い分ける必要があります。
ここでは主要な利回り指標と比較のための代表的な尺度をわかりやすく整理します。
表面利回り
表面利回りは名目上の年利率で、年間クーポン額を取得価格で割って求めます。
計算は単純で、債券の利息収入だけを見たいときに有効です。
ただし、表面利回りは元本の返済時期や中途償還の影響を反映しない点に注意が必要です。
モーゲージ債では借り手の繰上返済があるため、表面利回りだけで評価すると誤解を招くことがあります。
実質利回り
実質利回りはキャッシュフロー全体を内部収益率で評価した利回りで、いわゆるイールド・トゥ・マチュリティに相当します。
モーゲージ債の場合は将来の返済パターンが不確実なため、シナリオに基づいて複数のキャッシュフローを想定し、IRRを算出することが一般的です。
計算にはプレペイメントの仮定が大きく影響しますので、前提条件を明示して比較することが重要です。
実務ではモデリング結果を基に、最悪ケースやベースケースを併記して判断することが推奨されます。
イールドカーブ
イールドカーブは満期ごとの金利水準を結んだもので、金利環境の全体像を把握するのに役立ちます。
モーゲージ債の価格は特定の満期だけでなく、カーブ全体の変動やスロープに敏感に反応します。
スポットカーブやフォワードカーブを用いて割引や再投資の前提を明確にすることが重要です。
また、国債カーブやスワップカーブとの相対関係を見ることで、割安度やリスクプレミアムを評価できます。
スプレッド
スプレッドは基準金利に対する上乗せ分で、リスクや流動性の補償を示します。
モーゲージ債で重視される代表的なスプレッドを整理します。
- Treasury スプレッド
- スワップスプレッド
- Z スプレッド
- オプション調整済スプレッド OAS
オプション調整済スプレッドは、埋め込まれたプリペイメントオプションの価値を取り除いた後のスプレッドで、モーゲージ債の相対評価に適しています。
単純なスプレッド比較だけでは不十分な場合が多く、金利ショックやプレペイメントシナリオ下でのスプレッド挙動も確認することが大切です。
デュレーション
デュレーションは価格感応度を示す指標で、金利変動に対する債券の期待変動率を把握できます。
モーゲージ債では複数のデュレーション概念が用いられますが、下の表で概要を示します。
| 指標 | 特徴 |
|---|---|
| Macaulay デュレーション | キャッシュフロー加重平均期間 |
| Modified デュレーション | 金利変化に対する価格感応度 |
| Effective デュレーション | オプションを含む非線形性を考慮した感応度 |
モーゲージ債はプリペイメントによる非線形性でネガティブコンベクシティを示すことがあり、単純な修正デュレーションだけではリスクを過小評価します。
そのため、実務ではエフェクティブデュレーションを用いて、金利ショックごとの価格変動をシナリオで確認し、ヘッジ方針を決定します。
投資実務の手順
モーゲージ債への投資を実行する際は、準備と手順を明確にすることが重要です。
本章では銘柄選定の基準、購入時のチェックリスト、そしてリスクヘッジ手段を具体的に解説します。
銘柄選定基準
銘柄選定は投資成果を左右する最重要プロセスの一つです。
書類や公表情報を丹念に確認し、想定シナリオに対する耐性を評価してください。
| 基準 | チェックポイント |
|---|---|
| 信用力 | 格付け確認 発行体の財務状況 |
| 償還構造 | 平均残存期間 トランシェの優先順位 |
| プリペイ特性 | 過去のプリペイ率 借入環境との相関 |
| 担保品質 | 物件種別の分布 地域的偏りの有無 |
上記の表は選定時に最低限確認すべき項目をまとめたものです。
それぞれの項目について、定量データと定性評価を組み合わせることを推奨します。
購入チェックリスト
実際に購入する際は、チェックリストを基に漏れなく手続きを進めてください。
- 発行体情報の最終確認
- 格付けとストレスシナリオの照合
- 流動性の確認
- 想定利回りと実効利回りの整合
- 取引コストと税金の試算
- 内部承認プロセスの完了
購入口座や決済方法も事前に整備しておくと安心です。
特に取引コストは小さく見えることが多いですが、総利回りに影響を与えますので軽視しないでください。
リスクヘッジ手段
モーゲージ債特有のリスクに対して、複数のヘッジ手段を組み合わせるのが有効です。
まず金利リスクに対しては、デュレーションを合わせる運用や金利スワップの活用が考えられます。
信用リスクを低減するには、格付けや発行体の分散を行い、必要に応じてクレジットデフォルトスワップを利用します。
プリペイメントリスクに対しては、短期と長期のポジションを組み合わせることで影響を平準化できます。
ポートフォリオヘッジとしては、トランシェごとの比率を調整し、上位劣後の組み合わせを工夫する方法が有効です。
さらにシナリオ分析を定期的に実施し、不利な事象が発生した場合の損失想定を明確にしてください。
最後にヘッジコストと残存リスクのバランスを常に評価し、過度なヘッジにならないよう注意が必要です。
モーゲージ債投資の最終チェック
投資判断を最終決定する前に、金利変動、プリペイメント、流動性の各リスクを改めて洗い出してください。
想定利回りとリスクシナリオを突き合わせ、最悪ケースでの損失許容度を明確にします。
- 想定デュレーションの確認
- 繰上返済率のシナリオ
- 発行体の信用状態
- 流動性と売却先
- ヘッジ手段の有無
購入価格とスプレッドが妥当か、複数の指標で最終チェックを行ってください。
可能なら小口でのテスト買付を行い、実際のキャッシュフローと市場の反応を観察することをおすすめします。

